私は病室にいる。といっても、今日の私は患者ではなく見舞客だった。ベッドに寝ているのは先生。信じたくないが、何時かこうなってしまうのかな、とはずっと思ってた。
昼下がりのきらきらした光に包まれながら、先生は眠っていた。私は先生を黙って見下ろす。病室についた時、先生が眠っていても起こさないようにしよう、と決めていたのだ。
不意に、先生の口が微かに開いた。
「かずゆき――」
かずゆき、というのは私の名前ではない。そこで私は「あぁ、かずゆきは先生の息子の名前なのだな、先生には息子がいたのか――」と静かに悟る。