レースのような透かし編み、パールのボタン

今まで貰った手紙を読み返してじんわり心が暖かくなるのを感じながら、自分が他人に送った手紙は自動的に消滅してくれていたらいいのに……なんて思う。恥そのものだから。そんな考えが頭に浮かんできたばっかりに、返事が書けなくなってしまった。

いつも筆が乗る瞬間が訪れるのを待ち、「今だ」と思ったその時に手紙を書き始める。便箋を買いに行く、あるいは自分で便箋を作るところから始まる時もある。便箋が見つかっても、気に入った色のペンが見つからなければ、手紙が完成するまでにもっと時間がかかることもある。

ただ、今回ばかりは、二度とそんな気持ちにならないまま時間だけが過ぎていってしまうのではないかと思った。レターセットに埃が被り、お気に入りのペンのインクは出なくなり、お互いの生活がどんどん変わっていく。無論、私自身は何の変化もなく、ずっと同じ場所に立ち尽くしているのだけど。

最後に会った日は、「もしかしたらもう二度と会わないかも」と考える間もなく、あっさり終わった。「またね」の「また」は来なかった。こんな時代を生きているので、半分は時代のせいにできる。あとの半分は、私の弱い心のせい。