混沌

地震の夢。何故かみんな、次に来るのは防ぎようもない大震災だと分かっていて、大勢の人でひとつのところに集まってその時を待っていた。といっても、安全な避難場所にいるわけではなく、民家のリビングみたいなところ(私が居たのは親戚の家)に一般人も芸能人も一緒にいる。私は従兄弟の姉と兄といた。

誰かが「そろそろだから本当にやばいよ」と言い初めて、その場にいた人がみんな手を繋ぎ始めた。その時、意識があるまま潰されて身動きが取れなくなったらどうなるんだろう、という恐ろしい考えが思い浮かぶ。そんなのは嫌だ。私がそうなるんじゃなくてお母さんがそんな目に遭うのも嫌だ。そういえばお母さんはどこだろう。

次の瞬間、大きい揺れが来た。酷い縦揺れ。みんな片手を誰かと繋ぎ、もう片方の手で自分の頭を守っている。私の好きなスポーツ選手Nがそばに居た。Nが叫んでいる様子がスローモーションのように目に飛び込んできて、「あぁ、今とんでもない状況ではあるけど、私たちは今この瞬間一緒な時を過ごしているんだな」、なんて考える。

誰かが怖さを払拭するために大声で歌い始めた。すると、みんなも後に続いてどんどん歌い始める。ただ、最初に歌っていた人に合わせるわけではなく、みんな好き勝手に歌っているので、ほとんど叫びに近く、逆に地獄絵図、阿鼻叫喚といった感じだった。私は泣きながら絶叫していた。歌声に負けないくらいの大声で泣いたつもりだったのに、途中で声も出ていないことに気づく。

 

部屋の中で泣いていたはずだったのに、気付いたら病院に運ばれていた。ストレッチャーに乗せられて、物凄いスピードで病院の廊下を走り抜けていく。その時、芸能人のCを見た。さっきのNもそうだけど、いつもテレビで見るような人たちも一緒に被災している。Cは相方の安否を確認していた。

ふと、ストレッチャーで運ばれるほどの私はどんな傷を負っているんだろう、と思う。あまり痛みはないが、今の自分はどんな姿なんだろう。ビクビクしながら、運ばれた部屋の姿見で自分の顔を見る。頬を擦りむいただけのいつもと変わらない顔が映し出される。なんだ、よかった……と安堵していると、「先程頭をぶつけた時に脳が出血して深刻なダメージを受けているようなので、緊急手術を執り行います」と告げられる。