砂糖菓子

中高一貫の女子校に通っている。

里帆とは中学生の頃から付き合っている。

 

「ねぇ、西郡に見られてるよ」

「本当だ、ずっと見てる。うざ」

私たちは先生に見られてもお構い無しで(寧ろそのスリルを楽しんでさえいる)、四六時中手を繋いで内緒話ばかりしている。

 

 

高等部に上がって里帆が素っ気なくなった。他の女の子と話してばかり。オマケに文芸部に入るらしい。そんなこと聞いてない。

 

場面転換して、文芸部の部室前にて。

「永野さんいますか」

「ここは文芸部部室よ。騒がしくしないで。用があるなら正面入口から手続きを踏んで入ってください」

文芸部の先輩らしき人に冷たく言い放たれる。手続きとは、正面入口に立ち、学年、組、出席番号、名前、呼び出したい相手の名前と理由を宣言することらしい。めんどくさい。

 

「1年1組2番 海野憂永、永野里帆さんに言いたいことがあります」この辺りから吹っ切れてやけくそになる。

「里帆。最近、お話出来なくなって寂しいよ。最近里帆は文芸部の話ばっかりだね。最初は、私のこと嫌いになったのかなって思ってたの。でも、里帆だってやりたいことあるよね。私、里帆のことが大好きで大好きで、ずっと一緒にいたくて、だから一時も離れたくなかった。でも、私のせいで今まで沢山の里帆の可能性が全部潰されてきた。里帆はこんなにも素敵で才能溢れる人なのに、本当は私みたいな凡人と付き合うべきじゃないよね」当初、私に冷たくしていた文芸部員もこれを聞いて泣き出す。