真夜中

夜中の3時に目が覚めた。喉が渇いている。水ではなくて何か甘いジュースが飲みたくて冷蔵庫を開けると、ブルーベリージュースしか入っていなかった。私はこのジュースがそんなに好きではないのだが、仕方なくコップに注ぐ。キッチンの奥の冷蔵庫のある部屋でそうしていると、廊下から騒がしい声が聞こえてきた。夜中の3時に、だ。耳を疑う。冷蔵庫のある部屋からこっそりリビングを覗くと、兄とその友達が数人いた。夜中に他人の家にいるんだから、もう少し声のボリュームを落として欲しいのに、お構い無しに喋り続ける男達。私はうんざりしながら早く部屋に戻ろうと思ったのだけど、パジャマ姿であの人たちの前に出ないと部屋に戻れないことが猛烈に恥ずかしくなった。暫く悩んで、男達の声を聞きながらそこに隠れていた。

ようやく、意を決して部屋に戻るためにリビングを通ることにする。通る時に、(こんなガラの悪い友人がいたのか)、などと失礼なことを思う。目が合ってしまったので、一応小さな声で「こんばんは」と挨拶をした。無視。

無視されたことに無性に腹が立った。私の声が聞こえなかっただけかもしれないのに、どうしても怒りが収まらなくて、震える手で何故か手元にあった小皿を床に叩きつけた。小皿は割れ、白い破片が飛び散る。男達は皿が割れたことにも気付かず談笑している。半泣きになって、(もう勝手にしろ)と心の中で呟いて一目散に自室に逃げた。

割った皿の後片付けをしてないけど知らない。私は悪くない。あんな時間に人がいるから。

私は、ベッドの中で言い訳を繰り返す。喉が渇いてジュースを飲むために2階に降りたはずなのに、私の喉はまた乾き始めていた。