煌めき

よく晴れた日の午後、一時間後にとある博物館で待ち合わせするために知らない街を歩いている。博物館のある最寄り駅で降りたはいいが、正確な場所がわかっていなかった私は、時間もあるため当たりを散策することに決めた。‬

 

‪大きな公園の木陰で水しぶきと人々の歓声が上がっている。噴水でもあるのだろう、と近づいてみたらそこには巨大なプールがあり、シャチとアザラシが泳いでいた。どうしてこんな街中に?と思いつつ、シャチが好きな私は喜んでそこへ向かう。‬ ‪歩いている途中で教授とすれ違った。博物館の前とはいえ、こんな知らない町で会うなんて信じられないような偶然なのだが、すっかりシャチに心が奪われており教授には話しかけずに‬公園へと向かった。

 

プールの周りにはまばらに人がいた。親子連れが木陰に座り込んで、気持ちよさそうに泳ぐアザラシたちやジャンプするシャチを鑑賞している。私も彼らの隣に腰をかけた。

プールを管理しているお兄さんが、「アザラシかシャチに触ってみたい人、手を挙げて」と声をかけた。私も触ってみたかったが、元気な子供たちが手を挙げているのをみて、これは子供向けのイベントだった……と自粛した。選ばれたのは小学校低学年くらいの少年だった。お兄さんに誘導され、白いアザラシのお腹を撫でさせてもらっている。少年は物足りないのか、「もっと触りたかった」と不服そうな顔をして、アザラシの腹をぺちぺちと叩いていた。交流はそんな感じで少し触らせてもらう程度で終わる予定だったのだが、お兄さんがプールにアザラシを返している時に少年が「どうしてダメなの?」と詰め寄った。「危ないから近寄らないように」とお兄さんが諭した一瞬の出来事だった。少年がプールに落ちた。

 

観客から悲鳴が上がる。足もつかない深いプールの中で、少年は助かりたいの一心で藻掻く。闖入者を疎ましく思ったのか、アザラシは少年を追いかけ回し、出て行けと言わんばかりに腹を突っつく。少年を救出するために、お兄さんが他の係員を呼びに行った。

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